マザーハウス


今日は仕事、のはずだったが午後は半休をとってしまった。行き先は新宿、向かうはマザーハウス

山口絵理子さんの著書『裸でも生きる』を聞き知ったのは春先のこと。しかし実際に手にとって読んだのは梅雨ころだった。この本は勇気とパワーを与えられる本である。最初に読んで以来、この数ヶ月だけでも思い出したかのようにこの本を読むこと数回。平易な文体の中にもなぜかズシリと響く言葉や哲学が散りばめられている。とかく無気力だったり虚ろな目の若者が目に付く今の日本で、この若さでここまでしてきた人がいるのだ。女性であることは別段不思議ではない(思い切りのいい日本人女性は結構多いもの)。しかし、単身でバングラ社会に飛び込んで行った女性は世界広しといえど、そうはいまい。

著書やブログを通して山口さんの生きっぷりに惚れてしまった私は、それでも少し緊張していた。ある程度慣れていたはずの新宿だが行かなくなって久しいし、(第一、小田急にサンドリーズ・アレーなんて場所あったっけ? ← もともとデパートやブランドに疎い)と思いながら向かった先は、果たして今まで一度も足を踏み入れたことのない空間だった。初めての空間でどこか所在ない感の私は、『裸でも生きる』を片手に握っていた。マザーハウスモードに浸りたくて朝出る時にかばんに押し込んでいたのだ。

2時過ぎ、山口さんのお話が始まった。ネパールでの出来事、身の危険を感じながら生産ラインを確立するのに奮闘したこと、ネパール産の手織り生地をインドの工場に運んで製作してできた製品が新ブランド・マイティガルであるといった話を、淡々としかし熱い思いを込めて披露されていた。ネパールの生地を使ってインドの工場でバッグを製作した経緯とともに、100%ネパール産でない「告白」をやや残念そうにお話していたようにお見受けした。その心情は理解できるが、そういうtrans-boundaryな活動はむしろいいことだと私には思えてならなかった。というのも、1本の足(バングラ発)でかろうじて立っていた椅子が、足が2~3本(「ネパール+インド」発)になり安定感を増したように受け止めたから(もちろん次は、足の数が増えてほしい)。それに、生地の生産からバッグ製作まで一国でおさめるのもいいけれど、「合作」もネパールとインドならば不思議ではない。確か2年前、インドのシッキム(1975年インド併合まではシッキム王国、現在はインド・シッキム州。多民族による複合社会でネパール人が多い)に仕事で行った時のこと。歴史的にも地理的にもまた社会的にも、ネパールとインドが非常に色濃くつながっているリアリティをえらく実感した。この地域出身の友達(かつ元同僚)は、私から見ればインド人でもありネパール人でもある。

もうひとつ思ったこと。
店頭パンフによると、スタッフひとりひとりが「ストーリークリエイターだ」という。マザーハウスの成長を支えている背景には、確かにそれもあるのだろう。ただ、ちょっと別の角度からの価値をふと見出したので、それを書いておきたい。

製品の背景にあるストーリーを売るという考えはフェアトレードに通じるものがある。が、ストーリーを紡ぎ、ストーリーを重ね合わせるのは製作者や売る側だけでなく、商品を手にとって買う側の視点も大きいと思うのだ。たとえば、買い物をそれほどしない私がそれなりによく買うものといえば、日常品をのぞけば、書籍くらい(しかも不定期)。たまにアクセサリーや洋服もみたくなるが、それよりも何よりも、バッグや靴を見るのが好きでそれなりにこだわりもあるみたいだ。そして、途上国や開発援助との接点や仕事。何より途上国の女性や少数民族(いわゆるvulnerable peopleという存在)への思いが、いつもどこかにある。そういう私サイド(ここで言えば顧客サイド)の思いやストーリーを、展開し伸ばしてつなげていってくれそうで、うまくいけば現地まで届けたり現地との橋渡しまでしてくれる(という淡い思い)――その象徴がマザーハウスのバッグであり製品なのだ。まるごとのストーリーを買っているのが顧客であり、今日の私である。

それにしてもどうして、ここまで彼女にあるいは彼女の事業は共感を呼び、またひとを惹きつけてきたのだろうか。思いつくままにリストアップしてみると
1. 立脚点が目の前の現実や自分の目でみた事実にあること
2. それに依拠した事業展開であるために、軸がぶれないこと
3. 変化や前に進むことへ怖れがみられないこと(実際はたくさんの恐れがあったのだろうけれど乗り越えてきたこと)
4. これでいいのだろうか、何が本当のベストなのか、難題を突きつけられる度に問うている姿勢
5. 途上国をひとくくりにせず、かつ途上国のリソース(ここでは素材・人材)の可能性、潜在性を信じていること。そのためどこか無限の可能性まで感じられること(しかもBottom of Pyramid (BOP)を目指した市場とはまた大きく違います)。

ちなみに私は、デザイン、色ともに気に入ったものを、応援する気持ちも込めて、マザーハウスとマイティガルでひとつずつ購入。しかも、がばんの包みはいわゆる小田急デパートの包装紙でなくコットンでできた袋だそう。不思議なことだが、バッグを買って紙以外の包装はこれが初めてだったと、帰りの電車の中でしっかと握った包みをみながらにわかに気づく。

いい買い物ができた足で、そのまま書店によりアトランダムに本を眺め、8冊ほど購入。
贅沢な午後のひとときに感謝。半休ばんざい!と心の中で叫ぶ。

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プロフィール

Sainah

Author:Sainah
仕事&興味:途上国と開発援助 [セクター] 農業・自然環境・生態系
少数民族、伝統文化、科学・技術、時間管理、組織マネジメント、外国語(☜ 日本語とあわせて日々奮闘中)、海より山、温泉、古いもの好き、ABBA、中島みゆき

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