ことばに訴える時


かつての留学先の大学からときどき手紙が届いていた。所属していた学部長からのときも大学総長からのときもある。もちろんメールで一斉送信のことが多いけれど、そこは同窓生のネットワークに力を入れる学校ゆえ、手紙も年に何回か届いている。メールのあと来る手紙の共通点は、いずれも長い手紙であるということ。とりわけ、総長や学部長からというのは、強烈なメッセージと説明責任を果たすべき時であることが多い。今回も何かありそうだ。手紙を開く前にそう思った。それにしてもやはり長い手紙である。3枚半にわたりぎっしり書かれているから、余計長く感じる。要約してみよう。

 

全教員、職員、学生、そして同窓生のみなさまへ

同校が直面している経済的な問題についての概要をお知らせしたのは数週間前のことでした。この状況下でどのような予算措置が最適か思案していた私の初期の考えについてもお伝えしました。今回は、今一歩踏み込んで、実際に新年度(2010-2011、米国の学校の新年度は9月から)を迎えるにあたり、我々が取り組んできた困難な状況と取り組みを皆様にもぜひ知っていただきたく、書面にてご連絡差し上げます。
(そういえば来ていたような?ほとんど読んでいない)

まず最初に、本校はここ数年、めざましい成長と躍進を遂げてきたことは今一度心に留めていただきたいと思います。ただ、そのような中でも残念なことに、世界的な不況の影響で大変難しい状況にあると言わざるを得ません。本校の年収の約50%は内外からの寄付によるものでしたが大きく減少しています(ここで説明の数字が並ぶ)しかしこれは本校だけではありません。大学全体、米国全体であまねく直面している、またこれからも続くであろう状況です。

ひとまず、学生の奨学金は確保したところです。学生諸君の勉強、研究、興味の追求を奨励する本学の姿勢に変りはありません。
(学生の日々の生活に大きな変化はないことを強調)。明日のリーダーとして羽ばたくべく、存分に能力とスキルを磨き続けて欲しいと切に願っています。

この結果、予算上足りない額を算出してみました。
(ここでまた数字の説明が続く。長いので略)。この予算は、来年以降の予算計上にも大きく影響するだけでなく、実に現実的な線での計算です。したがってこれを基に、様々な話し合いを続けてまいりました。

とはいえほかの予算を回すとか一部、節約するといった程度の対処では極めて難しいものがございます。本校にとっても実に痛みを伴う決断を迫られていました。すなわち、この予算措置を進めていくにあたり、私は昨日、直接影響のある職員と話し合いの場をもちました。とはいえこれは、これまでの仕事人生の中でもっとも難しいものでした。


(新年度に迎える学生の数、修士何人、博士何人の予定といった数字と説明が続く。)
これからも引き続き、寄付を募ります。また新しい支援先の開拓や支援の約束を取り付けるべき試みがあれば努めていく所存です。そのひとつとして、新しく迎える教職員について紹介します。(その先生の紹介が続く)このようなバックグランドを有する彼を本校に迎えることは望外の喜びです。これからも、現職の教員に移動がなければ、ほかの教職員を探すことはできないことでしょう。

教職員、とりわけnon-ladder facultyについて、本校のニーズと予算との兼ね合いで現在、検討しております。その関係で、本年6月に契約終了の何人かのnon-ladder facultyについて、契約の更新はできないことになるでしょう。これまでの本校への多大な貢献を知ればこそ、彼らを惜しむ気持ちを隠せません。いずれまた、ともに働ける日を楽しみにしています。

一方、予算削減とともに、業務の効率化をはかり機能のスリム化も進んだ面もあります。
(何人かの学務主任や事務主任について、その役割の兼任や統合についての説明)こうした機能のスリム化に伴い、大変残念なことに、業務Aと業務Bへの支援は削減することになりました。また業務Cは、度重なる話し合いの結果、この部分も大幅に削減するしかできないという結論に達したことはまことに遺憾です。最後に、本校の図書館も大学の総合図書館と統合することになりました。

いずれの削減も、たいへんな痛みを伴います。(略) 現に、スタッフ82人のうち6人の雇用ができなくなりました。この6人に、自主的な退職を申し出たスタッフの数は入っておりません。またこの6人のほかに、定年退職となり去ってゆく同僚もいます
(その二人の功績を述べる)。

この数週間、数ヶ月はおそらく本学始まって以来、もっとも困難な時期として歴史に刻まれるでしょう。慎重に、包み隠すことなく、責任をもって、できうる限り全力を尽くしあたってまいりました。教職員とは幾度となく議論し、相談を重ねてきました。その結果、学生への影響を最小限にするべく最大限の配慮と最良の解決法に到達したと信じています。そのために、優先順位付けや人の配置に対して、非常に難しい決断を迫られました。このような措置を講じる事態は遺憾極まりないことであり、私たちもできることなら直面せずに済めばと願っていたことでもありました。

これから本校は、大学全体も学期末に向かい、1年でもっとも忙しい時期に向かいます。しかし、こういう時こそ状況を見失うことなく、バランスの取れた見方を保つ姿勢が肝要と私は考えます。この先、事態が好転する時期がきっとやってくるでしょう。世界の経済状況がこれ以上に悪化しなければ、また前進していけるものと信じています。

私自身、極めて楽観主義者ですし、本校に赴任したことにいささかの悔いもございません。むしろ、このような形で皆様と働き分かち合いながら舵をとる立場にあることは、この上なく光栄なことと深く感謝しています。

(注:学部長は1年前に着任したばかりだった)

(ここで、不意に?教職員がどういう方向で協力してくれているか、学生のイベントなどにも言及)

本校は、短期的には困難を経てきたものの、基本的にいい形で進んでいます。これまで本学の発展のために尽くしてくれた前任者の指導力を引き継ぎ、素晴らしい機会を享受してきました。これから一層、本学関係者の皆様とともに歩み、協力し、名実ともに本学の名を高めることに全力で邁進する所存でございます。

 

これを読んで、
はじめに言葉ありき 
の文化を感じて、ため息が出た。アカウンタビリティという言葉も何も要らない。言いにくいことでもひとことも「力が及ばず/このような事態になり申し訳ない」などと謝罪せず、どこか前向きのトーンを全体的に崩さず、時々数字を入れるなど説得性をもたせながら、読み手にメッセージが伝わることにもっとも適した言葉を盛り込む努力をどこまでも惜しまない。この手紙も、要は、「予算減に伴い、業務のスリム化と人員削減を行いました。学校の目指す方向を示して努力を続けます」ということを説明しているに過ぎない。

ちなみに私には、こういうスキルがもっと必要と思われる(汗)。

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プロフィール

Sainah

Author:Sainah
仕事&興味:途上国と開発援助 [セクター] 農業・自然環境・生態系
少数民族、伝統文化、科学・技術、時間管理、組織マネジメント、外国語(☜ 日本語とあわせて日々奮闘中)、海より山、温泉、古いもの好き、ABBA、中島みゆき

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