M先生の提言

日本の大学の英語教育について考えているうちに、とあるシンポジウムを思い出した。

それは、聴衆250人ほどのシンポジウムだった。途中から、本題とは外れて、国際農業研究における日本の人材育成に焦点が絞られていった。大学の先生やフロアからしきりに、日頃の雑感ともいえる意見が出されていた。
- 学生が海外に出ても通じるような教育を学部レベルで行わなければならない
- だいたい日本は博士号が軽視されている社会だ
- 日本は研究所の職員をもっと海外の研究機関に送り込むべきだ
- 今は子どもが海外の僻地(*)に行くことを親も本人も乗り気でない風潮がある
などなど。最初は議論が静かに展開していたが、そのうち日本人学生のコミュニケーション能力について、議論が加速していった。その流れを受けて、それまでずっと黙って聞いていたパネリストの一人、M先生がおもむろに口を開き、いともあっさりとこんなことを仰った。

「こういう議論は、実は別段目新しいことではない。おそらく2年後も同じことを言っていると思う。あるいは2年前も同じことを言っていたかもしれない。日本のこの状態は永遠に変わらないのではないか。なぜか。学生のことをとやかく言う向きは多いが、では教える側はどうなのか。たとえば日本の大学で、専門課程の2年間は全部英語で授業をしようという話が持ち上がっても、反対するのはいつも教授陣だ。負担も大きいし、できないからだという。先生にできないことを学生に求めるのはおかしな話ではないか。これは一例に過ぎないが、学生ではなく先生の側が一向に変わっていない。これでは日本は何も動かない。今日、パソコンを使えないと研究どころかどの世界でもやっていけないように、英語を含め国際社会で堂々と勝負できないなら、そういう方には早く身を引いていただいた方がいいと思う」

・・・・・・・・・・・・・・・・・  し~~~ん    ・・・・・・・・・・・・・・・・・

ちなみにM先生は、日本をはじめ海外の研究機関で長く仕事をされてきた科学者で、いたって涼しい顔をしている。こういう意見にあまり抵抗がない人もいるが、どうやらその場に居合わせた大学関係者はかなりショックだったようだ。静まり返った場は俄かに活気付き、様々な反応と議論が百出していた。収拾もつかない、つかせる必要もないような雰囲気だった。

あとで、M先生は茶目っ気たっぷりに仰った。
「実はね、少し目を覚ましてもらいたくて、わざと挑発的に言ってみたんですよ~」
そして、そのシンポジウムは確かに2年前のことだった。


* 海外で研究所があるところは、たとえ首都でないにせよ僻地でもないのだが・・・。

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プロフィール

Sainah

Author:Sainah
仕事&興味:途上国と開発援助 [セクター] 農業・自然環境・生態系
少数民族、伝統文化、科学・技術、時間管理、組織マネジメント、外国語(☜ 日本語とあわせて日々奮闘中)、海より山、温泉、古いもの好き、ABBA、中島みゆき

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