日本だけではない


山中さんの話を書いた翌日にこういうことを書くのも何ですが、タイムリーで印象が強かったので書いておこう。

それは

1月6日号の Nature の記事。

ズバリ

CAREERS Where are they now?

大学院を出てポスドクとなったその後のキャリアについて、紹介されているが、これはアメリカの話。

記事によると2004-2009年まで追跡していた24人のうち、21人のその後を確認。

・研究を続けている12人(うち5人は今もポスドク)
・別の世界へ転身した人9人
 その内訳はビジネス(3人)やサイエンス以外の公的機関(1人)、サイエンスライター(3人)、
 サイエンスから離れてしまったひとも(2人)

ちなみに米国では、博士課程の大学院生といえば授業料免除はもとより(免除というが大学なりほかのスポンサーが代わりに払っているのだ)奨学金付きが普通だから、生活の苦労という点では日本の大学院生よりはるかに恵まれている。バイトなんてしないで研究にいそしみなさい、というメッセージ付奨学金なのだから。収入面だけみれば、日本の学振をもらっているドクターの学生が、そのまま米国の大学院生、という図式があてはまる。

だからこの記事は、ポスドクをしたその後、ということになる。
すなわち、学位はとって研究者としての一歩を踏み出した数年後、だから30代。セカンドポスドクも入るから、30代前半から後半まで幅広い。当然、人生計画も考える重要な時期だ。

しかし正直、驚いた。米国でのアカデミックポスト獲得のたいへんさは仄聞してはいたが、大学院生までの話で、学位を取ってからでもここまでとは思わなかった節がある。米国で、大学院の博士課程をするにはかなりの投資がされている(それが国からだったり大学からだったり、財源はいろいろだが)。だから、米国では学位を取るまでにすでにある程度のセレクションがかかっているというのが、わたしの認識だった。そこからポストを得るまでに、1/3はいなくなるにしても、6,7割は残り、アカデミックポストを取るかほかの大学関係の職(小さなカレッジで教えるとかも含む)を得るものと、どこかで思っていた。なのに、ポスドクになってから人生を考え直す人がいかに多いことか(実は私もポスドクから転向したから、何だか他人ごとではない)。しかもそれが海の向こう、サイエンスの国アメリカで起きているとは。

しかも Natureだからかどうか知らないが、出てくる人々は MIT, UCLA, Cornellなどの有名大学出身者ばかり。
何よりも、経験者としての言葉は、シンプルで明確なだけに重く、まさに傾聴に値する。今学生のひとも、ポスドクの人も、この記事の一読をお薦めします。

The hardest part of the postdoc was how it ended, and the spectre of unrealized potential I had in that lab, in that career path and field.

I don't necessarily want to be a lab rat, now that I am a mother.

I want to live a life - not just be grappling for grants.

Science is only one of many activities in which human beings engage. Don't let its practice rule your life. Don't think that it is the only plausible perspective on the world.

Off-kilter work-life balance strained marriages, complicate dparental aspirations, and stymed the pursuit of other interest.

On the one hand, I feel like my scientific training was a massive detour and took up a lot of time that I cannot get back.

中には仕事で米国に来た英国人ポスドクまで登場して、アカデミックには残らなかったがNASAに職を得た。いい仕事をしているようにみえるものの、本人はいたって冷静で「英国人なんだから今のプロジェクト終了後まで米国に居座るつもりはない。」というコメントで終わっている。



何だかどれも否定的なトーンに聞こえるかもしれない。しかし、見方によっては、これは日本の大学院生へのエールというか共有すべきメッセージではないだろうか。

研究は好きな人は、また続けられる人は、とことん進めばいい。

しかし必ずしもそうでないような人は、違う道もあるということを認識し、下調べを進め、タイミングを自分で見極めたうえで決断することもまた、必要である。

Science is only one of many activities in which human beings engage.
Don't let its practice rule your life.

これは本当にそうだと、今だからわかる。私はサイエンスが好きだし、サイエンスの発展を今もって願い、また信じているけれど、自分の人生と軌を一にしきれない部分があったのだろう。サイエンス研究は、本当に独創的なサイエンス研究をやりたくまたできるごく一握りの人と、また少数の実用的な研究のみをする人のみに任せてしまっていい気がしている。その方が、科研費も有効に使えるというもの。

それにしても昔は(私が学生だった頃)、海外でポスドクと聞けば武者修行で、そのあと若いうちに小さくでもラボを構え、ひと旗あげる、といった気勢がどこかしら感じられたもの。この記事では、ポスドクが人生の分岐点というトーンで、どこか隔世の感を感じる。

科学の世界には、若い人がもっともっと夢を抱けるような可能性をみたいもの。

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Re: No title

コメントありがとうございました。もう3年前でしょうか、コメントをいただいていたことに長らく気づかす大変失礼いたしました。申し訳ありません。

私の学生時代(90年代)は日本でもポスドクの存在に憧れる人も多かったんですけれどね。ポスドクは海外武者修行が前提だったこともあり、ポスドクこそサイエンスの先端を行く存在でしたから。今やポスドクの平均年齢も上がってきていますし、不安定さは変わらないので、特に日本では濫用されていないことを願うばかりです。

北米だとドクターの価値が日本よりは高く評価されることが多いかと思います。既に、次のステージに上がられているといいのですが。研究に限らず日本の人事制度自体が疲弊しておりうまく機能していないように見受けられますが、その中でそれぞれが自分の立ち位置をみつけていけるといいですね。ご活躍の場は国の内外を問わないとなおいいかもしれません。

日々の雑事に追われて気の向いた時に書きとめるブログになってしまっていることもあり大変遅くなりました失礼をお許しくださいませ。

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Sainah

Author:Sainah
仕事&興味:途上国と開発援助 [セクター] 農業・自然環境・生態系
少数民族、伝統文化、科学・技術、時間管理、組織マネジメント、外国語(☜ 日本語とあわせて日々奮闘中)、海より山、温泉、古いもの好き、ABBA、中島みゆき

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