poor language?

「だって、英語ってpoor languageでしょ」
金曜の昼下がり、話の流れでランチ仲間のひとりがこう発したのを聞き、「まぁ、ある意味そうかもね~」とどこかで納得しかけている自分がいた。このセリフを聞いたのは今日が最初ではない。布石だったのか、そういえば昨年も同じようなことを聞いたことがあった。

最初の発言の主マフラと出会ったのは、初夏の東京だった。リスボンで働くポルトガル人女性。25歳で市議会議員に当選したが、ある時「このままでは自分が成長できない」という焦燥感から、一度は政治の世界から退いた。30代半ばの今は、とあるオフィスで働きながらキャリアアップを図るが、それでもいずれは政治の世界に戻りたいと話す。小柄ながら、気持ちのいいほどエネルギッシュな女性だ。

ポルトガルに行ったことがない私の想像力をもってしては、ポルトガルと聞いて思い浮かぶのは、フランシスコ・ザビエルとカステラ発祥の地、くらいか。そこで、何かもうひとつくらいないかと考えをめぐらせ思い出したのは、新田次郎の遺作となった未完の小説『孤愁―サウダーデ』だった。小説の主人公は、故国ポルトガルを想いながら日本で亡くなった文人モラエス(1854-1929)。この小説と共に「サウダーデ」という言葉を初めて知った。これについては、新田次郎のご子息、藤原正彦氏の記述を拝借しよう。

  サウダーデというのは、ポルトガル人特有の感情を表わす言葉として、よく引用されるもの
  である。対応する日本語や英語はないが、「愛する人やものの不在により引き起こされる、
  胸の疼くような、あるいは甘いメランコリックな思い出や懐かしさ」、と言われている。望郷、
  懐かしさ、会いたいが会えない切なさ、などはみなサウダーデである。単なる悲哀ではなく、
  甘美さと表裏一体をなしているのが、この言葉の特色である。
                                 (藤原正彦『数学者の休憩時間』より)

もし「あなたにとってのサウダーデは何か」と聞かれれば、人によっていかようにも異なってくるらしい。最愛の家族や子どもだったり、届かない世界だったり、変えられないが狂おしいほど懐かしい過去だったりと、その人の心情や想いを映し出す鏡のようなものかもしれない。

そこで、モラエスと同郷のマフラ相手にそのサウダーデをもち出してみたところ、4ヶ国語を話す彼女ですら、「サウダーデね、あれだけはなかなか訳せない言葉なのよね~」とすでに遠い目をしている。そしてやおら切り出した。
「英語って貧弱な言葉でしょ。ひとつの単語がいくつも意味をもつのは便利でいいけれど、ポルトガル語やスペイン語、フランス語や日本語に比べたら、英語は断然、表現や言葉が貧しいわよ」
English is a poor language. (*1)と言い切ったセリフを聞いた時は、内心驚きながらも、どこか妙に腑に落ちたのか、メモメモ  と頭の中で叫んでいた(^^;)。

そしてまた、冒頭のセリフ。ちなみに二人とも欧州人で、大陸でもどちらかといえば小国の出身である。それでも言葉や文化に対する自負はものすごい。
「私たちの言語(*2)には、英語では表現しようがない言葉がいくらでもあるのよ」
あたかも、背負った歴史が違うと言わんばかりの言いぶりだ。確かに、日本語でも大和言葉を出すまでもなく、英語には変換できない言葉がある。たとえば「侘び、寂」の意味するところを本能的に理解できても説明は難しい。「切ない」などもそうかもしれない。一方、英語にあって日本語にない言葉だってある、と人はいう。プライバシー、インテリジェンス、などは一例かもしれない。それでも、プライバシーと表記すれば、その含蓄し意味するところは自ずと通じてしまうのが、日本語の特徴であり幅でもあるかと思う。

英語の構造は確かに平易だし、動詞の変化も少ない。だからこそ、ここまで普及したのかもしれない。もしかしたら、重要だが十分でない、というのは、メッセージを伝えるには英語は重要だが、それ以上の次元では世界語といえど英語だけでは事足りないということだろう、か。


*1 これには後日談がある。気心の知れた米国人に、このことを軽く(それでも一応、オブラートに包んで ^^;)話して反応をみたら、「そうなんです。英語はほかの言語に比べれば、実に浅い言葉であると言わざるを得ません」と、実に情けない反応をしてみせた。もっと反論がほしかったわたくし・・・。

*2 「私たちの言語」として、当然のごとく日本語が含まれることにさりげに喜びを覚えてしまう私(^^;)。彼らとて日本語をどの程度知っているかは定かではないし、リップサービスかもしれない。だからといって日本語は問題外と一笑に付されるわけでもない。日本語は、歴史的にもそれなりの価値が認識された言語であると、単純な私は勝手に解釈している。



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Sainah

Author:Sainah
仕事&興味:途上国と開発援助 [セクター] 農業・自然環境・生態系
少数民族、伝統文化、科学・技術、時間管理、組織マネジメント、外国語(☜ 日本語とあわせて日々奮闘中)、海より山、温泉、古いもの好き、ABBA、中島みゆき

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