シリアの思い出(11)


朝5時にホテル前に迎えのタクシーが来ていた。このときの光景は妙によく覚えている。11月だったし日も昇っておらず、空もまだぼんやり蒼かった。次にいつまたシリアに来るのか、そういうことがあるかも想像できず、しっかり見おさめておこうと思ったのかもしれない。

帰りもパリ経由で、パリに着いた途端、急に日本人が目に入ってきたことが覚えている。お土産選びに楽しそうだった。気の張っていたせいか、私はどこか疲れていた。



帰国してからほどなくして、シリアやレバノンのニュースが遠い日本でも連日報道されるようになった。2006年11月21日に政府の要人、ジュマイエル産業相が暗殺された。カレンはまた、大変な日々を強いられていたかもしれないのに、帰国して脳天気なメールを送った我が身を反省した。

暗殺されたピーター・ジュマイエル産業相は享年34歳、反シリア派の政治家で、反シリアの発言を繰り返していたという。元レバノン大統領の息子でもあったことからもわかるように、レバノンきってのキリスト教派の名門の御曹司である。シリアの息のかかった武装集団ヒズボラのレバノンでの位置づけについては、想像以上のことはわからない。ベイルートで交通渋滞に巻き込まれた時、これもイスラエルのせいだと言ったカレンに、ジャドが急に食ってかかったことを思い出した。ジャドはシリア寄りのヒスボラを攻撃したイスラエルを、よくぞやってくれたとでも思っていたのだろうか。そう言えば、ジャドは何かにつけて言っていた。
「レバノン料理はシリア料理とは全然違う。しかも料理だけじゃない。すべてにおいてレバノンはシリアよりずっといい。車だっていい車が多いだろう?」
いい車といってもBMWとばかりである。
「何もすぐにシリアを引き合いにださなくても別にいいんじゃない?」
何気なく言った私にジャドの即答が帰ってきた。
I hate Syria!
一瞬耳を疑ったが、そう言い放つ彼の目つきは、Why?と聞く余裕すら与えてくれなかった。それに聞いても理解できなかっただろう。



その後届いたYさんからのメールによれば、
「こちらは、状況が少し怪しくなって参りました。本日はジュマイエル工業相の市民葬が大々的に行われる予定です。何も起きないといいんですが・・・。良かったですね。早めに帰国なされて・・・。こちらとしても安堵しております」
ベイルート行きに当たりこの方の存在は本当に心強く、カレンとの不思議なつながりもあって助けられた。アレッポにいる時から連絡させていただいた。今もって感謝の念を思い起こす。

カレンからも数日後にメールが届き、安心する。
「東京に無事着いたと聞き、ホッとしています。あの時帰ってよかったわ。聞いているかもしれないけれど、あの後レバノンはまた、不安定な情勢になっています。何が起こるかわかりません。写真ありがとう。みんなにも送っておくね」
カレンの友達も皆無事だそうだ。

アレッポで知り合ったハナディはICARDAのスーダン人研究者。メールで曰く、
「家に着いたのね。安心したわ。こちらは無事よ。シリアの空もアレッポも街もいつも通りよ。全く問題ない。といっても雨が降らないのは困りものだけれどね。農村ではこれから種をまくので雨がほしいわ」
ハナディはやはり研究者であり、外国人である。

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Sainah

Author:Sainah
仕事&興味:途上国と開発援助 [セクター] 農業・自然環境・生態系
少数民族、伝統文化、科学・技術、時間管理、組織マネジメント、外国語(☜ 日本語とあわせて日々奮闘中)、海より山、温泉、古いもの好き、ABBA、中島みゆき

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