金曜の午後@デリー


この1週間、インドはデリーにいた。12月のインドとなれば、肌に焼けつくような強烈な日差しはあまり感じない。むしろ朝晩は肌寒く、日中も雲が多く気温も上がらない、とくに夜は冷える。夜中にホテルで仕事をしていて寒いと感じても暖房というオプションはどうもないようだ。そこで、寒さをしのぐためにお湯を沸かしてお茶を飲むか、フリースなど持ってきた一枚をはおるしかなかった。

今回の出張はなかなか先が読めないというか、予定はある程度読めるのだが、どこでどんでん返しがあるかわからないので最後まで気の抜けない緊張感がつきまとっていた。短期間で仕上げる作業を求められていたが、それも終わった金曜の午後、自由時間ができた。そこで、かつてお世話になった S 先生に会いに行くことになった。そう、インド滞在中の唯一の自由時間でありハイライトは、まさに S 先生にお会いした金曜の午後のひととき。

実はインド行きが決まった時からできれば会いたいと思っていたが、時間的に会えるかどうかわからなかった。それでもS 先生からは何度かメールやホテルにメッセージが来ていた。電話でS 先生の声を聞いただけで、心温まり穏やかな気持ちになり、涙が出そうにすらなった。

私にとってのS 先生は、一言では形容しがたい存在。2005年春、中国の昆明で最初に出会って以来、尊敬する学者であり、心から信頼し相談できる仲間であり、友情すら感じる長兄のような存在でもあった。あまり派手なことを好まない性質で、話すべきことはしっかり話すもののインド人にしては本当に物静かな方で、性格的にもどこか通じるものがあった。もし今からでも学生に戻れるなら、この先生の学生になりたいと思ったことは一度や二度ではない。もっとも、学生にしてもらえるかは甚だ心もとなくもある(何でもこの大学院に入るには30倍だそうだ。もっともこれはインド人倍率で、留学生枠なら倍率も緩和されるらしい)。ともあれ、これまでいろいろなインド人に会ったし仕事もしてきたけれど、この先生のおかげで私のインドとインド人への印象は随分といい方向に保たれてきたのではないかと思う。

ホテルから目的の大学までは30-40分ほど。車からみる光景は、それまでの1週間で目にしていた光景とはどこか違った。毎日通る道路にはほとんど車しか目に入らず、どこか整然としている。昼間ならひとりでも歩けそうな治安にみえるし、実際そうだと聞いた。一方、大学に向かう道中は、時々マーケットやバスを待つ人の群れ、カオス的な区域が現れては消え、どこか人間臭さが漂っている街の一角が続く。そしてそれがまさに、私の知っている「インド」でもあった。同じデリーでも、職場が違えばこれほど目に入る光景が違うものかと思った。職場が違うということは働く相手も異なる。同じ私という個人が見ても、今と昔とではおそらく見ている世界も異質かもしれなかった。

見慣れた景色が見えてきたと思うと、やはり大学だった。電話してカントゥーンで待ち合わせることになった。前も来た学生食堂だ。5分ほどしてS 先生が現れた。昨年のクリスマスに雲南で会って以来だ。だからそれほど久しぶりではないものの、実際、話は弾んだ。

そこで遅いランチを済ませ彼の研究室に戻った。彼とは長らく折々に仕事を一緒にしてきたが、実は彼の研究室に行くのは初めてだった。2階にオフィスがありその隣に土壌分析のラボがあった。そこにいた二人の学生のうち、一年前にインドに来たというシリア人留学生と少し話した。ICARDAの話をすると、彼の方から「ICARDAはすっかり破壊されてしまいました。ICARDAだけではないです。アレッポの一帯はすべて壊されてしまったと思います。」と切り出した。「アレッポ城まで壊れたかはちょっとわからないけれど。」ということだった。私の聞き間違いでなければいいのだけれど。

大学のキャンパス内。大学はどこも似ている空気が流れている。
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その後、S 先生からある本を渡された。立派な本だった。みれば表紙に私の名前もある。話には聞いていたが、これぞ聞きしに勝る喜び。何とも嬉しく有難いこと。何より彼と共著者になるとは私にとってあまりに名誉なことだ。今さらながらにあの大変だった日々を思い出す。がんばってまとめた甲斐があったと思う。

さらにS 先生は「しばらく好きにしていて。良かったらメールでも」とPCを開いてくれ、となりのラボに消えた。私は彼の、というか研究者のこういう自然体が好きなのだと思う。ゲストであれ誰であれ、気を遣うことなく放っておいてくれる。誰に対しても同じ態度を取る人を見る時、そうではない世界を知ってしまった元研究者としては懐かしささ覚え、ホッとする瞬間でもある。

雰囲気はやはり南国っぽい?
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ただ夜の便でデリーを発つため、それほど時間があったわけではない。しかし旧交を温めるには十分な午後のひとときだった。大学に来て少しリラックスしてから空港へ向かえばいい、という彼の言葉通り、少しキャンパス内を歩いたりのんびりして、その後、またカントゥーンでチャイを飲み、体を温めた。12月のデリーの夕刻はもう寒い。朝晩は冷えるし、この日は朝から風も強く、日本の11月のような気候である。

こういうこともあろうかとお土産にもってきた「白い恋人」だが、そういえば彼はバリバリのベジタリアンだった。ベジタリアンにも卵やチーズはOKだけれど魚も肉もダメ、卵も含めて一切ダメ、などいろいろなレベルがあるのだが、彼は確かかなりのベジタリアンだったはずだ。なので、卵入りクッキーを食べるかどうかはわからないのだが、挙げた手前いまさら聞けなかった。

ちなみにインド人にお土産を持ってくるとき、何が喜ばれるかといえばチョコレートだという。チョコレートはもちろんインドでも手に入るがなかなか高価なだけに大変喜ばれるらしい。そういえば昔、スリランカ人に、コアラのマーチをリクエストされたことがあるが、「あんなおいしいものはみたことない」と言われた。と考えれば、日本のフツーのお菓子はたいてい喜ばれるのではないだろうか。

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Sainah

Author:Sainah
仕事&興味:途上国と開発援助 [セクター] 農業・自然環境・生態系
少数民族、伝統文化、科学・技術、時間管理、組織マネジメント、外国語(☜ 日本語とあわせて日々奮闘中)、海より山、温泉、古いもの好き、ABBA、中島みゆき

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