津軽海峡冬景色

昨日、作曲家の三木たかしさんの訃報が流れた。芸能関係に疎い私でも知っていた演歌、「津軽海峡冬景色」を作曲された方だという。実は、この歌にはちょっとした思い入れがあるので、今日はそのことについて書いてみたい。

小学校に入る前のことだったと思う。父の仕事の関係で、青森に住みかけたことがあった。子どもにしてみれば「青森ってどこ?」という程度の認識である。それも、青森市や弘前市ではない。よくよく聞けば津軽半島の北端、竜飛岬に程近い三厩(みんまや)という村で、海の向こうには北海道がみえた。その海こそが津軽海峡だったのだ。

しかしそこでの生活を始めるや否や、両親は言葉の壁にぶつかったらしい。まるで外国に来たみたいだ、とふと漏らした母の一言もあり、結局、父の単身赴任が始まった(*1)。その後、母に連れられては三厩に向かう行程を、何回繰り返したことか。当時はまだ新幹線もなく、上野駅から夜行の寝台列車に乗り、一晩ゆられていく旅だった。乗車前の夜8時半ごろ、上野駅で決まってお蕎麦を食べ(させられ)、車内の二段ベッドの上段を陣取る。簡素なベッドの枕元には、缶ジュースを置くのにお誂えの形をした、とびら付の窓があった。そこで自分の席(ベッド)について最初にやることは、窓辺にジュース(これもなぜか決まってファンタグレープ *2)を置くこと。ほどなくして、列車がゴトンゴトンと動き出す。ここまで来ると眠るしかない。しかも翌朝は早い。揺れに身を任せているうちに、乗客の低い話し声も自然と遠くなる。そして早朝に到着の青森駅に降りると、「青森って本当に寒いのね~」と感じるのが常だった(*3)。

だからであろう。私にはあの歌の、とくに歌詞のひとつひとつが無性に理解できる、実感として理解できてしまうのだ。
・ 上野発の夜行列車と駅の光景も
・ 北へ帰る無口な人の群れもその様子も
・ 青森駅の朝の様子も
・ 雪深い津軽の寒さも
・ こごえそうなかもめも
・ 海鳴りの音まで、聞こえてきそうである

こんな歌は、そうあるものではない。

おそらく「津軽海峡冬景色」こそが、私が単に知っているだけでなく、この先も、そらで歌える(一応?)唯一無二の歌であり続けるに違いない。



*1 東北に縁もゆかりもなく、幼い子ども達を抱えた母にとって、言葉がまったく通じない=外国、と思えたことは想像に難くない。しかし長じて、最初にこれを聞いた時、何と情けないと思ってしまった。ただ母の名誉のために言っておくと、ほかにも理由はあったらしい。いずれにせよ、これを機に、父はその後も単身赴任を続けることになるのだが、数年毎に日本各地を回れるのであれば(ましておや東京に戻ることもあるわけで)、ずっと父についていけばよかったと、私はよく思ったものだ。何より、言葉の通じないとしたら、それは父とて同じである。しかも仕事をする身の方が、言葉が通じないハンディははるかに大きいと思うのだが。こう書けば、「いいえ、生活していくこともタイヘンなのよ!」という母の声が飛んできそう、ではある。ちなみにそのときの母は、まだ外国に行ったことがなかったはずだ。

*2
あの時間に上野駅で食べるものと言えば、ほとんどお蕎麦(またはうどん)しかなかった。お蕎麦といいファンタグレープといい、それしかオプションがなかったところに何とも時代性を感じる。

*3
今思えば、寒かったのは青森だからか、窓辺に一晩置いた結果、冷えきったジュースを一気に飲み干したからかは、判断の難しいところ。両方ということにしておこう。



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Sainah

Author:Sainah
仕事&興味:途上国と開発援助 [セクター] 農業・自然環境・生態系
少数民族、伝統文化、科学・技術、時間管理、組織マネジメント、外国語(☜ 日本語とあわせて日々奮闘中)、海より山、温泉、古いもの好き、ABBA、中島みゆき

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