補足


前回の補足として書きます。

自然科学の分野で基礎研究をしながら学位取得を目指す大学院生、そしてアカデミックポスト(正規雇用であれ任期であれ)を目指すポスドクの方々は、ぜひとも頑張っていただきたいと思います。基礎科学の発展を心底望む気持ちが、私の基本スタンスです。ただし、

その選択や決断が、本当に自分が望む、主体的選択の結果であれば

ということになります。


これは研究の分野にいる人に限らないとみていますが、どうも

周りに流されたり、だれかが(国が、先生が、ラボヘッドが)何かをしてくれる

と当り前のように思っている若い研究者予備軍が普通に見られた時代がありました。
今がそうでないことを願っています。

それでも老婆心ながら言っておくと、
先生や先輩のアドバイスに耳を傾けうことも時に大切ですが、流されてはいけません。
もっと主体的に人生を選択し、決断していくことも十分考えて、変化も含めて戦略的に動いた方がいい、という主旨です。なぜなら、言うまでもないことですが、だれもあなたのことをあなた以上には考えないからです。どんなに有能で真摯な医者でも、患者以上に患者の気持ちや病状、痛みを理解できないのと同じです。

今朝、たまたま早く起きてテレビをつけたら、教育テレビだったのか、「基礎医学に進む研究者が少ない傾向を憂う」といった内容が流れていました。医者をしながら基礎医学をする研究者の支援の充実を国にお願いしたい、そんなくだりでした。その「お願いしたい支援」の内容ががまた、生活費の支援と研究費の支援の二つでした。正論ですが、お願いする姿勢にどこか違和感を覚えました。そもそも、そういう人には学位取得後に医者に戻るという選択肢が十分にあるわけです。というかそれがもう、大半の基礎医学研究に従事する人(=医者)の前提でもあるはずです。

ところが、医学以外の自然科学系(すなわち理学、農学、薬学、工学系)のポスドクには、そうした選択肢がありません。一般論ですが、薬学、工学系ならまだ企業への就職とか、道が考えられます。農学だって企業はもとよりほかにもいろいろな就職先の選択肢があるかもしれません。そうなると、理学系の人が一番困るという図式が浮かびあがります(確か、公務員試験でも、農学はあれど理学という区分はなかったような?)。

ひとたび研究の道に入るとそれ以外の生活設計を考えられない研究者が多いのもまた一面の事実でしょう。
日々の実験や研究活動で忙しいほかに、ほかの社会をあまり知らない、ロールモデルがないからピンとこない、生活に苦労した経験が少ない育ちのいい人が周囲に(とくに上の世代に?)多い、などなど理由はいくらでもみつけられます。理由はともあれ、せっかく教育を受けてきたのだから、自分と対峙しもっと人生に貪欲になっていいと思います。

私もいずれまたおいおいに書いてみたいと思います。いまはそれどころではありませんが。。。

日本だけではない


山中さんの話を書いた翌日にこういうことを書くのも何ですが、タイムリーで印象が強かったので書いておこう。

それは

1月6日号の Nature の記事。

ズバリ

CAREERS Where are they now?

大学院を出てポスドクとなったその後のキャリアについて、紹介されているが、これはアメリカの話。

記事によると2004-2009年まで追跡していた24人のうち、21人のその後を確認。

・研究を続けている12人(うち5人は今もポスドク)
・別の世界へ転身した人9人
 その内訳はビジネス(3人)やサイエンス以外の公的機関(1人)、サイエンスライター(3人)、
 サイエンスから離れてしまったひとも(2人)

ちなみに米国では、博士課程の大学院生といえば授業料免除はもとより(免除というが大学なりほかのスポンサーが代わりに払っているのだ)奨学金付きが普通だから、生活の苦労という点では日本の大学院生よりはるかに恵まれている。バイトなんてしないで研究にいそしみなさい、というメッセージ付奨学金なのだから。収入面だけみれば、日本の学振をもらっているドクターの学生が、そのまま米国の大学院生、という図式があてはまる。

だからこの記事は、ポスドクをしたその後、ということになる。
すなわち、学位はとって研究者としての一歩を踏み出した数年後、だから30代。セカンドポスドクも入るから、30代前半から後半まで幅広い。当然、人生計画も考える重要な時期だ。

しかし正直、驚いた。米国でのアカデミックポスト獲得のたいへんさは仄聞してはいたが、大学院生までの話で、学位を取ってからでもここまでとは思わなかった節がある。米国で、大学院の博士課程をするにはかなりの投資がされている(それが国からだったり大学からだったり、財源はいろいろだが)。だから、米国では学位を取るまでにすでにある程度のセレクションがかかっているというのが、わたしの認識だった。そこからポストを得るまでに、1/3はいなくなるにしても、6,7割は残り、アカデミックポストを取るかほかの大学関係の職(小さなカレッジで教えるとかも含む)を得るものと、どこかで思っていた。なのに、ポスドクになってから人生を考え直す人がいかに多いことか(実は私もポスドクから転向したから、何だか他人ごとではない)。しかもそれが海の向こう、サイエンスの国アメリカで起きているとは。

しかも Natureだからかどうか知らないが、出てくる人々は MIT, UCLA, Cornellなどの有名大学出身者ばかり。
何よりも、経験者としての言葉は、シンプルで明確なだけに重く、まさに傾聴に値する。今学生のひとも、ポスドクの人も、この記事の一読をお薦めします。

The hardest part of the postdoc was how it ended, and the spectre of unrealized potential I had in that lab, in that career path and field.

I don't necessarily want to be a lab rat, now that I am a mother.

I want to live a life - not just be grappling for grants.

Science is only one of many activities in which human beings engage. Don't let its practice rule your life. Don't think that it is the only plausible perspective on the world.

Off-kilter work-life balance strained marriages, complicate dparental aspirations, and stymed the pursuit of other interest.

On the one hand, I feel like my scientific training was a massive detour and took up a lot of time that I cannot get back.

中には仕事で米国に来た英国人ポスドクまで登場して、アカデミックには残らなかったがNASAに職を得た。いい仕事をしているようにみえるものの、本人はいたって冷静で「英国人なんだから今のプロジェクト終了後まで米国に居座るつもりはない。」というコメントで終わっている。



何だかどれも否定的なトーンに聞こえるかもしれない。しかし、見方によっては、これは日本の大学院生へのエールというか共有すべきメッセージではないだろうか。

研究は好きな人は、また続けられる人は、とことん進めばいい。

しかし必ずしもそうでないような人は、違う道もあるということを認識し、下調べを進め、タイミングを自分で見極めたうえで決断することもまた、必要である。

Science is only one of many activities in which human beings engage.
Don't let its practice rule your life.

これは本当にそうだと、今だからわかる。私はサイエンスが好きだし、サイエンスの発展を今もって願い、また信じているけれど、自分の人生と軌を一にしきれない部分があったのだろう。サイエンス研究は、本当に独創的なサイエンス研究をやりたくまたできるごく一握りの人と、また少数の実用的な研究のみをする人のみに任せてしまっていい気がしている。その方が、科研費も有効に使えるというもの。

それにしても昔は(私が学生だった頃)、海外でポスドクと聞けば武者修行で、そのあと若いうちに小さくでもラボを構え、ひと旗あげる、といった気勢がどこかしら感じられたもの。この記事では、ポスドクが人生の分岐点というトーンで、どこか隔世の感を感じる。

科学の世界には、若い人がもっともっと夢を抱けるような可能性をみたいもの。

歓迎すべきわがまま


来年度予算の成立前に、科研費の230億の増額が報道された数日前―クリスマスプレゼントとまでは言わないが、朗報には違いない。

いやそうでしょう、やはり。
ノーベル賞効果ともはやぶさ効果とも言われるが、この際、理由はどうでもいいから、長期的な科学技術の支援と支援体制の強化をお願いしたいものだ。科研費が増額したからには、どこか削減された予算があるはずだ。それが何かは知らないけれど、たとえODAが減っても科学技術の予算こそ増額すべきだと個人的には思っている。

首相の「わがまま」を通した形となるらしいが、こういうわがままは大歓迎。しかも、ここぞというときに出るわがままは、後から振り返ってよかったと思ったりそれなりに意味のあるわがままのことが多い。

科学への投資

 
 今年もノーベル賞の話題で日本が湧きそうだ。純粋に喜ばしいことだと思う。
以前こちらで紹介した、下村さんの文章はまっすぐでいい。同時に、随所に多くの科学に対する思いとメッセージが散りばめられている。ちょっと長いが、再び引用しよう。

(ここから引用)

思わぬ偶然を引き寄せることができたのは、少しの失敗は気にせず、あきらめずに努力したためである。試練には何度となく直面したが、私は逃げることは考えなかった。逃げることができなかったといってもよい。

研究者として、私は実験がうまいとも言われる。(略)実際のところは、私は不器用で、実験は上手ではない。よく失敗する。ただ、簡単にはあきらめない。うまくいかなかったら考え直して、別なやり方を試みてみる。だめだったらもう一度。それを何度も繰り返す。それだけだ。

科学研究に関していえば、私がやってきたのはずっと基礎研究である。生物発光の研究を、何かの役に立つとか考えたことはほとんどない。そうした基礎研究の蓄積があって、緑色蛍光たんぱくGFPのような、後に社会に役に立つものが生まれた。まったく予想を超えたことであった。あらかじめ、予定された成功などはないのだ。

日本の若い人たちに重ねていいたい。がんばれ、がんばれ。物事を簡単にあきらめてはだめだ。

(引用ここまで)

 うまくいかなくてもあきらめず、別のやり方を試してみる―これこそ科学のいい点であり、今の日本社会に欠けている視点だと思う。実際、日本の若い人たちでも、簡単にあきらめない人はまだ多い。研究者なんて、あきらめない精神の塊だ。それでも、そういったひとたちのやる気を失わせるような科学行政や社会の動きが何とも歯がゆい。私に言わせれば、科学は社会の投資である。これまでもこれからも科学技術立国として進むしかない日本にとって、国の将来への投資である。そして、もうこれ以上発展しなくていいというものでは決してない。
 
 たとえば、年間500万円のグラントがあったとしよう。使い道を細かく既定したうえでに細かい予算書やその根拠書類だの証憑やらの提出を求めるのではなく、「あなたの研究計画と研究の将来性にかけて、500万を投資します。どうぞご自由に、研究活動にお使いください。」と一言いってくれればいい。それがグラントのあるべき姿だと思う。ちなみに500万というのは、本を読んで論文を書けばいい分野ならいざ知らず、普通の自然科学やフィールドワークをする学際研究の研究費としてはそれほど大きい額ではない。問題は、小規模であろうと高額であろうと、研究をする立場からすれば申請準備でも報告でもかかる事務労力はそれほどかわりないこと。換言すれば、秘書や事務スタッフが複数いるような大きなチームでなければ、研究者にかなりの負担と労力がかかる。となれば、こうした作業に、大学研究機関の研究者が少なからず時間とエネルギーを費やさざるを得ない。それでいい研究成果を求めるのでは、あまりに筋が違う。

 ならばそういう仕事は事務担当にやらせればいいじゃないか、という声もあるだろう。まず、そんなスタッフが潤沢に雇える研究チームはごく一握りだ。さらに、その分をもっと別に研究に直結する仕事につなげたいと思う心情は、研究者ならば至極当然だ。できればポスドクを雇って戦力の強化をはかりたい場合もあろう。ポスドクなら、なおさら研究に専念したいし、周りもさせたい。それを含めてバックアップするのが研究支援の仕事であり、実務レベルでは大学や研究所の事務職員の仕事となるが、国はその責任の一翼を担っている。

 一方で、お金をもらう以上、税金を投入する以上、このくらいのチェックは当然という声がすぐに聞こえてきそうだ。一見、まっとうな正論に聞こえる。しかし、それに対してわたしはこう思う。
(1)お金の使われ方(予算計画)に異常なほど細かい注意が払われる制度は見直すべき
   成果が出ようが出まいがお金が適正に使われていればいい、というのであれば、研究費関係
   の報告は役人の説明責任のためだけに、しているようなもの。首をかしげざるを得ない
   ような「対応のお願い」も散見される。日本の好きな海外視察でもして、いっそ米国や英国の
   研究所や大学の研究費配分の仕方をしっかりと学んでくるといい。
  
(2)年度内消化でなく次年度への繰越を認める
   こんなこと、書くのもバカバカしいのだが、大まじめに主張する人がいるから念のため

(3)成果だけを求めるのではなく、研究の目指す方向性、将来性にかける姿勢がほしい
   これは投資の考え方につながる。3年で小さい成果は出るかもしれないが、成果が出なくても
   不思議ではない。なにが起こるかわからないけれど、知りたいからやってみる―科学とは
   そういうもの。昔、物理学者の小柴さんは、研究費支援を求めにある会社に出向き説明した
   ところ、「その研究が何の役にたつのですか?」と聞かれた。曰く、
   「今は正直、何の役にも立ちません。しかしこの研究の価値は100年後にはわかるでしょう。」
   それで出資を決めた企業の気概を国も見習うべき。

(4)国民への説明責任をかくれみのにしない
   税金というのであれば、数多ある国際会議や国際機関への拠出金など、いくらでも使途が
   うやむやになっている莫大なお金に対しては、どう説明できるのか。この手の支出額は、
   研究費に比べれば比較にならないほど高額だ。



 はやぶさの帰還で感銘を受けた人は大きい。しかし帰還するまでどれだけの人が、はやぶさの存在を知っていただろうか。将来性や意義を理解していただろうか。あるいはほかの分野でも、たとえば新薬の開発でも、10年に一度出ればヒットといわれている。何でもそうなのだ。科学への投資は息の長いものであるべきで、計画通りに行かないのが未知の自然現象に挑戦するサイエンスの根幹、というしっかりした認識を、まずは科学行政に、そして社会に求めたい。意外と社会の方が、スッと理解してくれるかもしれない。
 繰り返すが、役立つかどうか分からないのが科学なのだ。リスクを承知で、むしろそのリスクを背負って大学院を終えても、研究のためなら休日も返上して残業手当とかとは無縁で(そもそも研究者にはそういう感覚自体がもともとないのだが)仕事をしている若い研究者に、もっともっと温かい手が差し伸べられてしかるべきだと思う。ノーベル賞受賞者が出たときだけ喜ぶのではなく、地道に普段から支援の手を差し伸べる努力を、政府が進んで数十年いや永続的に続けるべきだ。

 夏ごろだったが、研究費配分の一元化(省庁ごとでなく)の報道があった。それもいいが、研究費そのものについて、以下の点を提案したい。
(1)そもそも科学研究費は、科学技術立国日本の将来への投資であると明記し、事業仕分けの対象外とする。
(2)若い研究者、女性研究者へ配分する研究費に重点をおく。
(3)ユニークなアイディアの萌芽研究を助成する特別枠を設ける。この場合、これまでグラントをそれほどとっていない若い研究者や独立前の研究員のみを対象とする。大規模な研究室に所属していない要件が加わってもいい。
(4)役所主導の細かい予算チェックを軽減する(省略する、とホントはいいたいところ)。その代わり、選考時の審査は透明性を高め、厳しくする。

 と思うままに書いてみた週末。

やっぱり・・・


名古屋に行ってるばあいじゃなかった、わたし

だけど、

名古屋に行くしかなかった、わたし。。。

この1週間、ざざ~~~っと過ぎていた。

書くだけでなく、いろいろ調べなきゃならないし。ほかにもいろいろな作業が(ひぃ~)。
週の後半はもう、佳境に入り。
気づくと目が。。。 イタイを通り越して、ちょっとおかしい?
(締め切り間際の仕事を複数、並行して進めるとこうなります。)

それにしてもこのご時世、どうしてどこにいてもメールが来るんだろう~。
働き者の方々とチームを組むと基本、とっても助かります(で、休みもなくなります )。
(注)とっても助かるのは、進捗がはやく生産性が高い点。やや困るのは、フィールドにいようがどこにいようが、どこかでアクセスポイントを見つけてはメールをぼんぼんよこしてくれる点です(こちらが休めない?)。

いや、そういうオマエがもっと準備を前倒しにしておけば。。。
はい、ごもっとも。だから、名古屋を恨めしく思ってみたり。

だれか~この負担を分かち合っておくれ~。
といいつつも、昨年までに比べればいまひとり増えたから、とっても助かっています(でも仕事自体が増えたしなぁ)。あとは、事務能力の高い、気の利く人がひとりほしい。ふたりいればもっといい(これをゼイタクという)。

せめて週末はできるだけ休むようにしよう。
といっても、来年から。。。

で、今日は、たまにはランチくらいしっかりとらないと、の気分でお気に入りのお店に。
okonomi.jpg
(じつはお好み焼きが好き)

これを乗り越えたら、せめて温泉 でも行きたい(逃避モード?)

バタッ・・・
プロフィール

Sainah

Author:Sainah
仕事&興味:途上国と開発援助 [セクター] 農業・自然環境・生態系
少数民族、伝統文化、科学・技術、時間管理、組織マネジメント、外国語(☜ 日本語とあわせて日々奮闘中)、海より山、温泉、古いもの好き、ABBA、中島みゆき

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